英語だと思って普通に使っていた言葉が、実は英語圏の人たちには全く通じない和製英語だったなんて経験はありませんか?例えばペットボトル。どんなに上手に発音ても、plastic bottleといわない限り英語圏の人たちには伝わりづらいです。今回は、そんな厄介な和製英語をたくさん紹介します。
和製英語とは?
まずは、和製英語がどういったものなのか、また、和製英語が日本で生まれる背景についてざっと確認してみましょう。
和製英語とは?和製英語が生まれる背景
和製英語とは、日本人によって作られた英語っぽい言葉であり、英語ではありません。ですので、日本語を話さない人たちに通じないことは、ある意味当然のことといえます。
そして、和製英語が生まれる背景については、カタカナの存在が大きいといわれています。日本語には外国から入ってきた言葉をカタカナ表記する習慣があります。単語同士をくっつけたり、略したり、変化させたりしながらも、外国語を受け入れる土壌があるのです。そんな土壌があることで、現在進行形で次々とあたらしい和製英語が生まれています。
和製英語の種類
外来語どうしをくっつけるなどして作ったもの
アフターサービス、ベースアップ、レベルダウンなど
既存の語形を省略して作ったもの
ワープロ(word processor)、パソコン(personal computer)、リモコン(remote controller)など
同じ英語があっても意味が異なるもの
ナイーブ、ユニーク、スマートなど
ジャンル別和製英語
ではここから、身の周りにあふれる和製英語を具体的にみていきましょう。食べ物、ファッション、ビジネス・仕事、その他日常生活の4つのジャンルにわけて紹介します。
食べ物
パン/bread
日本語のパンという言葉は、元々はポルトガルのpal(パウン)から来ています。
英語ではbreadと呼びます。フランスパンはFrench bread、ハンバーガーに使うような丸い形のパンはbun(バン)といいます。
ちなみに、英語でpanといえば、frying pan(フライパン)など浅めの鍋類を意味します。
シュークリーム/cream puff
シュークリームも、英語ではなくフランス語のchoux a la crème(シューアラクレーム)が語源です。英語圏の人にシュークリームというと、靴(shoe)のクリーム!?となるので、要注意の和製英語です。
フライドポテト/French fries、chips
日本語のフライドポテトは、アメリカではFrench fries(フレンチフライズ)、イギリスでは chips(チップス)と呼びます。
そして、アメリカでchipsというとpotato chips(ポテトチップス)をさし、イギリスでポテトチップスはcrispsと呼びます。
ハンバーグ/Hamburg steak、hamburger steak
ハンバーグは、英語圏ではHamburg steakやhamburger steakといえば伝わりますが、元々はドイツの料理でアメリカ人にとっては、あまりなじみのない料理です。
アメリカにはSalisbury steak(ソールズベリー・ステーキ)という料理があって、これが日本のハンバーグに一番近い料理といえそうです。
アメリカンドッグ/corn dog
アメリカンドッグも和製英語。英語圏ではcorn dog(コーンドッグ)と呼ばれます。
ソーセージをcornmeal(トウモロコシ粉)の衣でくるんだものなので、corn dog。ですので、厳密にいうと、小麦粉の衣でソーセージをくるむ日本のアメリカンドッグとは少し異なります。
ホットケーキ/pancake
海外でも地域によってはhot cakeやhotcakeというところもありますが、一般的にはpancakeと呼ばれます。
frying pan(フライパン)で焼いて作るケーキなのでpancakeです。
ショートケーキ/sponge cake
日本ではイチゴがのった生クリームたっぷりのケーキをショートケーキといいますが、英語ではsponge cakeが一番近い表現になります。
イチゴのケーキと明確にいいたいのであれば、strawberry をつけてstrawberry sponge cakeといってもOKです。
デコレーションケーキ/fancy cake
日本ではきれいに飾ったケーキをデコレーションケーキといいますが、英語ではfancy cakeと呼びます。fancyは「高級な」「豪華な」という意味の形容詞で、高級レストランのことをfancy restaurantといいます。
ソフトクリーム/soft serve ice cream
ソフトクリームを英語でいうとsoft-serve ice cream。短くしてsoft-serveと呼ぶことも多いですが、日本のようにsoft creamと呼ばれることはありません。
英語圏の人がsoft creamと聞くと、「柔らかいクリーム??」ということになってしまいます。
ちなみに、アイスクリームは英語でもice creamでOKです。
アイスコーヒー/iced coffee、cold brew coffee
英語ではiceにdをつけてiced coffeeといいます。
iced coffeeはホットで作ったコーヒーを氷で冷やしたものをさします。一方、cold brew coffeeは、コーヒー豆を常温あるいは冷たい水で抽出したもので、日本の水出しコーヒーにあたります。
アイスティーも同様にiced teaといいます。
コーラ/coke
英語圏では、コーラではなくCoke(コーク)と呼ばれます。
cola(コーラ)は炭酸の入った黒い飲み物の総称で、cola(コーラ)の中にCoca-Cola(コカ・コーラ)あるいは別名のCoke(コーク)と、Pepsi(ペプシ)があります。
Pepsi(ペプシ)はcola(コーラ)の1つですが、Cokeではありません。
また、日本ではコーラなどソーダ類もまとめてジュースと呼びますが、英語のjuiceは果汁100%のものをさすので、ソーダ類はsoft drinkになります。
ココア/hot chocolate
ココアは和製英語というよりは、カタカナ英語です。
通常はhot chocolateと呼ばれますが、cocoa(ココア)でもOKです。
ただし、発音が難しい([kóukou])ので、hot chocolateと言うほうが無難そうです。
ノンシュガー/sugar-free、sugarless
英語にはノンシュガーという表現はなく、sugar-freeやsugarlessと表現します。-freeのフリーは「自由」ではなく「~を含まない、~を除いた」の意味になります。
-freeは、あると悪いようなものがない場合に使われる傾向があります。例えばchemical-free(化学薬品を使用していない、無農薬の)、drug-free(麻薬のない、麻薬禁止の)などがあります。
-lessも、-freeと同じ意味あいで使われますが、homeless(ホームレス)、cordless phone(コードレス電話)など、本来はあると思われるものがない場合に使われることが多いです。
バイキング/buffet、all you can eat
食べ放題の意味で使わるバイキングですが、英語ではbuffetやall you can eatと呼ばれます。
日本でビュッフェスタイルを広めたレストランの名前が「バイキングレストラン」だったため、ビュッフェのことをバイキングと呼ぶようになったようです。北欧の食べ放題料理からアイデアを得たことが、バイキングと名付けた理由の1つだということです。
ですので、英語圏でバイキングといっても海賊のこととしか思ってもらえません。食べ放題のレストランはall-you-can-eat restaurantと呼ばれます。
ファッション
パーカー/hoodie
英語のparkaは、イヌイットが着るようなフード付きの分厚い防寒着のことをさします。日本語のパーカーは、英語ではhooded sweatshirtといい、普通はこれを略してhoodie(フ―ディー)と呼びます。
ワンピース/dress
one-piece(ワンピース)は、英語では水着や子ども服などのつなぎ服のことをさします。
また、one-pieceは後に必ず名詞がくる形容詞です。スーツのツーピースやスリーピースもtwo-piece suit、three-piece suitと呼ばれます。
ワイシャツ/shirt、dress shirt
ワイシャツは、Yという文字の形から名付けられたものではなく、white shirt(ホワイトシャツ)の「ホワイト」が「ワイ」に聞こえて、そのまま定着したものといわれています。
白いワイシャツはwhite shirtですが、色もののワイシャツもあるので、そんな場合は、dress shirtといえばよいでしょう。
マフラー/scarf
女性が使うような薄手のスカーフだけでなく、防寒具のマフラーも、どちらも英語ではscarfといいます。
スカーフではなく防寒具のマフラーといいたい時はwinter scarfといえばOKです。
数える時は、1つであればa scarf、複数であれば最後のfをvesにしてscarvesとなります。
ビーチサンダル/flip flops
ビーチサンダルは英語でflip flopsといいます。履物は、1足でも複数あつかいなので、常にsがついてflopsになります。
flipは「はじく」「ポンと打つ」、flopは「バタバタ動く」「ドサッと落ちる」という意味の単語です。ビーチサンダルを履いて歩くと、かかとの部分がサンダルに当たってパタパタと鳴ることから、flip flopsと呼ばれるようになりました。
ファスナー、チャック/zipper
ファスナー、チャックにあたる英語はzipperです。
ファスナーは英語のfastenerからきています。英語のfastenerは締め具、留め具の一般名称で、fastenerのひとつがzipperです。ボタンやスナップなどもfastenerに含まれます。
また、日本語のチャックというのは、もともとはファスナーの商品名で、その名前が一般名として定着しました。
リュックサック/backpack
リュックサックは英語ではなく、ドイツ語のruecksack(ラックザック)からきています。ruecは「背中」、sackは「袋」という意味で、英語のbackpackとまったく同じですね。
ビジネス・仕事
パソコン/computer、PC
パソコンはpersonal computer(パーソナル・コンピューター)の略です。英語圏では単にcomputer、またはpersonal computerの頭文字をとってPCと呼びます。
また、ノートパソコンはlaptop computer(ラップトップ・コンピューター)といいます。lapは「膝」の意味で、膝上サイズのパソコンという意味でlaptop(ラップトップ)と呼ばれています。computerを省いてlaptopで伝わります。
クレーム/complaint
「苦情」を意味する日本語のクレームは、英語のcomplaintにあたります。「苦情をいう」を英語で表現するとmake a complaintになります。
英語のclaimは何かを主張していい張る様子を表す言葉です。claimには、主張している内容が真実かどうかまだはっきりしていない、というニュアンスがあるのがポイントです。
サイン/signature、autograph
署名のサイン、有名人にもらうサインなど、日本では広い意味を持つサインですが、英語ではシチュエーションによって使い分けます。
署名のサインに相当するのはsignature、有名人からもらうサインはautographといいます。
そして、看板や標識などのことをsignといいます。
ノマドワーカー/digital nomad
ノマドワーカーとはデジタル端末を使って自宅やカフェで仕事をする人たちのことをさす比較的新しい言葉ですが、これも和製英語です。
英語のnomadは遊牧民のことで、日本語のノマドワーカーに近い表現は、digital nomad(デジタルノマド)となります。teleworker(テレワーカー)、working from home(在宅勤務)も一緒に覚えておきましょう。
サラリーマン/company employee、office worker
お給料をもらって仕事をしているという点で、サラリーマンに一番近い英語表現はcompany employeeになります。
日本では、自己紹介で「サラリーマンです」というような場面がよくありますが、英語圏ではI’m in marketing.(マーケティングの仕事をしています)、I’m a graphic designer.(私はグラフィックデザイナーです)というように、ただ「サラリーマン」というのではなく、具体的な職種を伝えるのが一般的です。
フリーター/part-time worker
日本では、定職を持たない人のことをフリーターと呼んだりしますが、これも和製英語です。
英語のfree(自由)+ドイツ語のarbeit(働く)+ 英語のer(人)の合成語です。
パートやアルバイト、フリーターなど、フルタイム以外の仕事は、英語ではすべてpart time jobというのが一般的です。
ちなみに、正社員のことはfull time workerといいます。
コストパフォーマンス/cost effectiveness
cost(費用)とperformance(効果)を対比した言葉で、こちらも和製英語です。 英語ではgood deal、value for moneyやcost effectivenessといいます。また、「リーズナブルな」「手ごろな」を意味するreasonableという単語も覚えておくといいでしょう。
その他日常生活
SNS/social media
SNSは Social Networking Serviceの頭文字をとったもので、そのままフルでいえば英語圏でも通じます。ただしSNSと略されることはなく、social mediaと呼ぶのが一般的です。
コンセント/outlet、socket
日本語のコンセントは、壁にある穴の方をoutlet(アメリカ英語)、socket(イギリス英語)といいます。コード側の差し込み部分はplugといいます。
insert a plug in the outletでコンセントにプラグを差し込むという意味になります。
ホッチキス/stapler
ホッチキスは商品名で、英語ではstapler(ステープラー)といいます。
日本が初めて輸入したステープラーの会社名がE.H.Hotchkissだったことに由来しています。
ビニール袋/plastic bag
ビニール袋、いわゆるレジ袋も、英語圏ではplastic bagと呼びます。
英語のvinyl [váinl] は床やイスなどに使われるしっかりしたプラスチック素材のことをさします。レコード盤のことをvinylと呼ぶこともあります。
他にもペットボトルはplastic bottle、サランラップ(ラップフィルム)もplastic wrapと呼びます。
マンション/apartment
英語のmansionは豪邸という意味になります。
日本語のマンション、アパートはどちらも英語のapartmentにあたります。そのうち、分譲マンションであればcondominium、または略してcondoといいます。
さて、ここからは物から離れて概念に関する和製英語をみてみましょう。
ユニーク/funny
日本語のユニークは「おもしろい」「風変わりな」という意味で使われますが、英語のuniqueは、「唯一無二の」「固有の」という意味の言葉です。
たとえば、unique storyは「おもしろいストーリー」ではなく、「他には存在しない、特別なストーリー」という意味になります。
スマート/ thin、slender、slim
体がほっそりとしている、痩せているといった意味で使われるカタカナのスマート。これも和製英語です。
英語のsmart(スマート)は、「利口な」「賢明な」という意味の単語で、体型とは全く関係ありません。
日本語のスマートに近い英語はthin、slender、slimなどになります。
ナイーブ/sensitive
日本では繊細で傷つきやすい性格のことをナイーブといいますが、本来の英語のnaiveは、「世間知らず」「考えが甘い」ことなどを意味し、決してほめ言葉にはなりません。
日本語のナイーブという意味を表現するとき、英語では「繊細な」「傷つきやすい」という意味のsensitiveを使うとよいでしょう。
ドンマイ/Never mind!
大丈夫!気にしないで!という意味で使われるドンマイですが、英語でDon’t mind!といっても、誰かを励ますような意味にはなりません。
mind は「気にする」という意味の単語なので、don’t mindで「私は構わない」「私は気にしないよ」といった意味になります。
失敗した人を励ましたい時に「私は構わない」「私は気にしないよ」といっても意味不明ですよね。そんな時は、Never mind!(気にしないで!)、Don’t worry!(心配しないで!)、It’s OK!(大丈夫!)といえばよいですね。
参照:和製英語 伝わらない単語、誤解される言葉 (角川ソフィア文庫)
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